福井の司法書士 永田司法書士事務所 相続・遺言・不動産登記・商業登記

資料室

裁判手続きのIT化

平成30年3月、「裁判手続き等のIT化検討委員会」の検討が終了し、4月初めに検討化委員会のとりまとめが公表されている。

政府は、訴訟の全面的なIT化を目指す。
まずは、民事訴訟一般を念頭に置く。
非訟事件や家事事件は将来検討する。
例えば、訴状提出は24時間365日利用可能、手数料は電子決済。送達も電子化。
訴訟記録にアクセスもできるが、当事者とその代理人等に限定される。
弁護士事務所や企業の会議室で証人尋問実施。
判決書の公開は今後の課題。

問題点は、IT化で裁判を受ける権利が侵害されてはならない。弱者・本人訴訟等。

2022年頃から開始をめざす。
第1ステージ 現行法のもとでのウエイブ会議・テレビ会議等の運用
第2ステージ 関係法令の整備
第3ステージ システム・ITサポート等の環境整備

現在、電話会議がよく利用されています。例えば、裁判所は大阪、当事者代理人は福井と神戸、期日にすべて電話で対応する。その影響で移送事件が少なくなっている。

諸外国の裁判IT手続きとは異なるところもあり、紆余曲折があるでしょう。

「相続させる」旨の遺言と不動産登記

「相続させる」旨の遺言と相続登記
                         司法書士 永田廣次

「相続させる」旨の遺言の効力

問題
1-1 Aは、長男甲に全てを相続させるとの遺言を行った。
ところが、A死亡後、長男甲と次男乙及び三男丙は、甲乙それぞれ2分の1づつ相続するとの遺産分割協議書を合意した。
どのように登記するか。


論点1
「共同相続人に『相続させる』との遺言をどのように解釈するべきか?」

最高裁平成3年4月19日判決
遺贈ではない。遺産分割方法の指定であり、遺産分割協議または審判を経る余地はない。
直ちに、相続人甲の所有になる。
そうすると、単独申請で甲への相続登記ができる。


論点2「添付書面は何か?」

遺言書
相続人甲の現在の戸籍と本籍記載のある住民票
被相続人Aの死亡記載のある除籍謄本
で足りる。
他の相続人の戸籍等不要


論点3
「しかし、遺産中の特定の財産ではなく、相続財産の『全部』を特定の共同相続人に『相続させる』との遺言をどのように解釈するべきか?」

最高裁平成8年11月26日判決
特定財産の「相続させる」旨の集合体であるとの判断。
この場合も、直ちに相続人甲の所有になる。


論点4
「遺言の内容と異なる遺産分割協議ができるか?」

遺産分割協議を遺言で取得した取得分を相続人間で贈与ないし交換的に譲渡したものと解する(東京地裁平成13年6月28日判決)と、できる。


論点5
「遺産分割協議ができるとするならば、遺言による権利移転を中間省略登記できるか?」

できない。
権利変動の実体関係を登記に忠実に反映させるべきである。
①即時権利移転効でまず遺言書による甲への移転登記をし、
そして、②共同申請で持分を移転する。


論点6
「上記論点5の②持分移転の登記原因証明情報証書にはどのように記載するべきか?」

所有権一部移転
年月日遺産分割でよいか


論点7
「しかし、いきなり遺言の内容と異なる遺産分割協議に基づく登記がなされたら、その登記の効力はどうなるか?」

判例(S35.4.21最判)の考え方では、登記が現在の状態に合致していれば中間省略登記も有効である。
原則は中間省略登記を認めないが(中間省略登記の抹消登記を求める正当な理由を欠くから)、登記をしてしまった場合は有効である。
ただし、不動産登記法の原理原則からすると疑問の残る判例である。


論点8
「遺言執行者がこの登記を抹消請求できるか?」

東京地裁平成13年6月28日判決
抹消できない
現在の権利関係に合致するからである。


論点9
しかし、「司法書士が、Aの長男甲に全てを相続させるとの遺言を知らず、遺産分割協議書を持参され登記申請依頼を受けたらどのような態度をとればいいのだろうか?」

遺産分割協議書の内容である甲乙共有の相続登記をいきなりしても職責に反しないだろう。知らないものはどうしようもない。
登記実務は、かように行っている。



問題
1-2 Aは、長男甲に全てを相続させるとの遺言を行った。
甲は、甲単独の相続登記を行った。
ところが、A死亡後、長男甲と次男乙及び三男丙は、乙丙それぞれ2分の1ずつ相続するとの遺産分割調停が成立した。
乙が調停調書を持参し乙丙2分の1ずつの共有登記依頼を受けた司法書士は登記できるか。


答え
全てを相続させるという遺言がある以上、即時権利移転効により所有権は甲に移転する。
しかし、遺言による相続登記後遺産分割協議ができるなら遺産分割調停もできてしかるべきである。
裁判実務は遺産分割調停を認める。
登記申請できる。
但し、乙からの依頼であるので、丙の持分に対し登記識別情報は提供されない。



問題
1-3 Aは、長男甲に全てを相続させるとの遺言を行った。
次男乙は、A死亡後、遺言が発見される前に長男甲と次男乙及び三男丙それぞれ3分の1ずつ相続する法定相続を行った。
そして、甲乙丙は、甲乙がそれぞれ2分の1ずつ相続するとの遺産分割調停を成立させた。
甲が調停調書を持参し甲乙2分の1づつの共有登記依頼を受けた司法書士は登記できるか。


答え
法定相続を行うことは、保存行為として認められている。
その後遺産分割協議が行われた場合は、すでになされている共同相続登記を抹消しないで持分取得者を登記権利者、持分喪失者を登記義務者とする共同申請により持分移転登記をすることになる。
また、錯誤による更正登記をなすべきとの意見もある(東京三多摩実務協議会)。
但し、単独申請により登記申請するためには、調停調書に登記義務者の登記申請に関する意思表示の記載が必要である(丙の甲乙に対する申請意思の擬制)。





遺言の解釈

身分の変動があった場合の遺言の解釈

問題
2-1 Aは、妻甲に全てを相続させるとの遺言を行った。
その後、妻甲と離婚した。遺言の撤回はない。
この遺言を全く無視して相続登記すればいいか。


答え
遺言を無視して元妻以外の相続人が相続登記を行えばよい。
元妻は、相続人でない。
戸籍等を添付して相続登記を行えばいい。


論点1
「登記原因証明情報を作成し、遺言があったこと等は記載しなくていいか?」

撤回されたとみなされるから必要ない。

離婚や離縁の場合は、前の遺言と両立できない後の行為とみなされ、前の遺言に抵触する。したがって、前の遺言の撤回があったものとして、元妻に対する遺贈の登記は受理されない。
妻に「相続させる」とある遺言を元妻に「遺贈する」と解釈するというのでは意味が違う(別れた妻にやるというのは一般的に考えにくい)。

昭和56年11月13日最高裁判決
離縁が抵触行為になるとした判例
※民法条文
1023条1項 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす
1023条2項は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為とが抵触する場合に準用する
1023条2項は、「遺言撤回の便法」を規定している
1023条の法意は、遺言者がした生前処分に表示された遺言者の最終意思を重んずることにあり、同条2項にいう「抵触」とは、単に後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となる場合のみならず、諸般の事情により観察して後の生前処分が前の遺言と料率せしめない趣旨のもとになされたことが明らかである場合を包含する。



問題
2-2 上記遺言に基づき遺贈の登記ができるか。職責上問題がないか。


答え
上記2-1で検討したように遺贈の登記はできない。



問題
2-3 Aは、長男甲に全てを相続させるとの遺言を行った。
長男は、Aの事業を手伝っていたが、Aと大ゲンカし家を出ていてしまった。遺言の撤回はない。
長男に相続させない理論はあるか。


答え
わからない。
民法1023条2項は、「遺言撤回の便法」を規定している。
しかし、この問題は、遺言の解釈問題であり、遺言者の真意の内実がどのようなものかという問題である。そして、遺言者が現実に何を欲したかと遺言者が事情の変更を遺言完成時に認識していればどのような意思であったかを補充解釈する問題が包含される。しかし、この解釈問題は困難を極める。
本来、上記のようなケースでは、生前に遺言書の撤回か相続人の廃除をすべきである。ただし、遺言者が痴呆で判断能力がなくなると更に困難である。後見人が就任しても、後見人は遺言の撤回はできないし、廃除も実際困難だろう。

今日遺言が活用されてきたが、遺言書の条項の解釈をめぐって相続人や受遺者の間にしばしば深刻な対立が生ずる。




「遺留分減殺と登記」

問題
3-1 Aは、長男甲に財産全てを相続させるとの遺言を行った。
A死亡後、次男乙は、遺留分減殺請求を行使した。
Aの相続人は、甲と乙のみである。
Aの相続財産は、積極財産として4億3千万円の不動産、消極財産として4億2千万円の債務を有していた。
甲は、相続登記ができるか。


答え
一応できる。
 ①即時権利移転効の考え方より(H3.4.19最高裁判決)
(「相続させる」との遺言の効力は1で検討した)
 甲は、単独で甲への相続登記ができる。
  添付書面「遺言書」「相続人の現在の戸籍と本籍記載のある住民票」
「被相続人の死亡記載のある除籍謄本」で足りる。
※他の相続人の戸籍等不要
そして   
②「請求年月日遺留分減殺」を原因として持分移転登記をする(共同申請)
  
但し、③甲が相続登記をする前に遺留分減殺請求があり、乙の遺留分侵害額が確定していれば、登記実務上直接甲乙共有の登記ができる。


論点1
「遺留分に違反する遺言は有効か?」
有効
※遺留分を主張しない限り遺言は有効
※遺留分に違反する遺言は無効ではなく減殺請求に服するにすぎない
(S35.7.19最判)。


論点2
「減殺請求権性質は何か?」

形成権
減殺請求の意思表示だけで効力が生じる(S41.7.14最判)。
遺留分の侵害となる遺贈は効力を失い、目的物に関する権利は当然に遺留分請求権利者に帰属する。遺贈された目的物の一部に減殺された場合には、遺留分権利者と受贈者との間に共有関係が生ずる。


論点3
「遺留分減殺があり、相続登記がされていない場合に遺留分減殺を踏まえた相続登記ができるか?」
直接遺留分権利者のために相続による所有権移転登記ができる(S30.5.23民甲973号民事局長回答)。


論点4
「論点3の場合の登記原因証明情報はどのようなものか?」

遺言書
相続人の現在の戸籍と本籍記載のある住民票
被相続人の死亡記載のある除籍謄本
減殺請求した相続人と被相続人との相続関係を証する戸籍謄本
遺留分減殺請求の意思表示をしたこと(日付・当事者等)がわかる書類
※他の相続人の戸籍等不要
※相続と同様として農地でも許可書不要



問題
3-2 甲の相続登記ができるとして、乙の遺留分減殺請求に対し、甲乙は、どのような遺留分侵害算定を行い、どのような登記を行うべきか。

(遺留分の算定と相続債務)
平成21年3月24日最高裁判決


論点1
「乙は法律上どれくらいの割合の減殺請求ができるか?」
総遺産×法定相続分の2分の1×遺留分の割合2分の1=4分の1

民法条文
1028条1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1028条1項1号 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
1028条1項2号 前項に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1


論点2
「遺留分の算定にあたって相続債務をどう評価すればいいか?」

遺留分の侵害額は、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺産の額に加算できない。

遺言によって長男に「財産全部を相続させる」とされていた場合
特段の事情ない限り、甲に全部の債務を相続させる旨の意思表示があったものとみなす(相続人間では、当該相続人が遺言書で指定された相続分の割合(このケースでは100%)に応じて相続債務をすべて承継する)。


論点3
「相続債務は、法定相続分に従って負担するとの最高裁判決が遺留分算定に影響するか?」
「相続債務は相続人間の問題として、『遺言の財産(債務)全部を相続させる』との遺言の内容を算定に影響させるか?」

平成8年11月26日最高裁判決は、対債権者に対する相続債務の相続人負担割合を判断したもので相続債務については法定相続分に従って負担する。
各相続人は債権者から履行求められたら応じる必要がある。

平成21年3月24日最高裁判決は、相続債務をどう評価するかを判断したもので、相続債権者の関与ないから債権者にその効力は及ばない。


論点4
「債権者が乙に法定持分の相続債務を請求し支払った場合の法律関係はどうなるか?」

遺留分の算定は相続人間における問題だが、相続債務は第三者である債権者との関係にあるので、債権者から請求があった時点で、請求の内容等を斟酌してその時点で清算すべき性質のものである。

乙は、承継した相続人甲に対して履行した相続債務の額を求償し得る。


論点5
「甲単独の相続登記してその後遺留分減殺の結果の登記をなすべきか?」

3-1① → ② で2回に分けて登記するべきである。
若しくは
登記実務が認めている3-1③で直接単独申請登記する。


論点6
「いきなり、遺留分減殺の結果の登記を申請するとなると、登記原因証明情報にはどのように記載するべきか?」

遺留分減殺請求日を原因日
共同申請
所有権一部移転(侵害額に相当する持分) 4億3000万分の250


論点7
「そもそも問題の案件の相談を受けた司法書士は、いきなり遺留分減殺請求を踏まえた相続登記を行って司法書士法上問題はないのか?」

登記実務が認めているので問題ないであろう。
ただし、原則は 3-1① → ② の手続きがあることを説明した方がよい
そして、②の遺留分減殺請求を踏まえた登記する場合は 共同申請となるので注意が必要。

司法書士職務上請求書使用の可否

司法書士は、戸籍の証明書や住民票の写しを職務上請求できる。
しかし、何でも職務請求できるのでなく、依頼を受けた事件や事務が
1 司法書士の業務範囲内であること
2 業務範囲内の場合委任を受けられる事務であること
3 簡裁訴訟代理等業務関係の場合、事件に紛争性があり代理人として立証活動に必要か
等の吟味が必要である。

私なりに、職務請求できるか否か場合分けを行ってみた。
今後変化があれば、訂正します。



司 法 書 士 職 務 上 請 求 書 使 用 の 可 否 事 例

№ 事 例(1号様式) 可否 備 考

1 親から、子の戸籍等の取得を依頼された。
× 法3条業務に該当しない(ただし、委任状で取得可)

2 兄弟姉妹の戸籍等の取得を依頼された。
× 法3条業務に該当しない(戸籍法10条2に該当すれば、委任状で取得可)

3 推定相続人から、相続が発生していないが、法定推定相続人の調査を依頼された。
× 司法書士業務発生していない
たとえ委任状あっても×

4 相続人から、相続関係説明図作成のため、相続人調査を依頼された。
× 相続未発生
◯ 相続発生後で、相続登記依頼・委任状あり

5 相続人から、遺産分割協議を行うために、被相続人の相続関係の調査を依頼された。
× 相続登記を受けていないから
◯ 遺産分割調停申立

6 相続人から、相続登記を依頼されたが、未だ遺産分割協議は成立していない。相続人がほとんどの戸籍等を持参したが、遠方の足りない戸籍等の取得を依頼された。
△ 協議は成立していなくとも、何らかの相続登記はする(協議が整わなければ調停申立するという前提)

7 相続人から、相続登記を依頼され、遺産分割協議は成立している。相続人がほとんどの戸籍等を持参したが、遠方の足りない戸籍等の取得を依頼された。


8 相続登記を依頼され、持参された戸籍等を調査したところ、婚外子がいる可能性が判明し、相続人から、その戸籍等の取得を依頼された。



9 不動産登記申請の添付書面である住民票の取得を不動産仲介業者から依頼された。
× 本人から登記申請依頼されていない
◯ 本人からの登記申請依頼・委任状あれば可

10 名変登記申請の添付書面である戸籍の附票の取得を本人から依頼された。
◯ 本人からの登記申請依頼あれば可(登記必要書類だから、取得の委任状なくていい)・委任状あれば可

11 農地法5条許可を条件とした仮登記があったが、所有者が死亡した。5条許可はまだない。本登記をするため仮登記名義人から相続人調査を依頼された。
× 仮登記
◯ 裁判なら可

12 除籍謄本の取得を、請求の理由を明らかにせずに依頼された。
× 何らかの司法書士業務依頼を受けないと不可

13 公正証書遺言に基づき、父(遺言者)から子への相続による所有権移転登記にあたって、子から、父の直前の除籍謄本の他、父の出生からの除籍謄本の取得を依頼された。
× 出生からの除籍謄本(他)は不要
◯ 直前の除籍謄本は可

14 簡裁訴訟代理権に基づき貸金返還請求訴訟提起をするにあたり、被告の戸籍等の取得を依頼された。
× 戸籍は不要
◯ 被告の住所調査は可

15 簡裁訴訟代理権に基づき貸金返還請求訴訟提起をするにあたり、債務者が死亡したので、訴訟提起前に相続人と交渉してほしい。債務者の相続人の戸籍等の取得を依頼された。


16 地裁事件の書面作成を依頼され、被告の戸籍等の取得を依頼された。
× 被告の戸籍は不要
◯ 続柄を確認・証明するために書証として裁判所に提出するとき ?

17 地裁事件に該当する法律相談を受け、相手方の戸籍等の取得を依頼された。
× 相談受けること自体ができない

18 家裁事件の書面作成を依頼され、相手方の戸籍等の取得を依頼された。
◯ 書類作成上必要であるなら可
(ほぼ添付書面になる)

19 家裁事件に該当する法律相談を受け、相手方の戸籍等の取得を依頼された。
× 相談受けること自体ができない

20 簡裁訴訟代理業務の相談を受け、相手方の戸籍等の取得を依頼された。
◯ 必要であるなら可

21 不動産登記申請手続の相談を受け、相談者から戸籍等の取得を依頼された。
◯ 法3条5号相談権あり

22 不動産登記申請書作成の相談を受け、相談者から戸籍等の取得の依頼を受けた。
◯ 法3条5号相談権あり

23 不動産登記申請添付書面作成の相談を受け、相談者から戸籍等の取得の依頼を受けた。
◯ 法3条5号相談権あり

24 賃貸借契約書作成の相談を受け、戸籍等の取得を依頼された。 × 司法書士業務でない
(行政書士なら可)

25 賃貸借契約書作成の依頼を受け、戸籍等の取得を依頼された。 × 司法書士業務でない
(行政書士なら可)

26 公正証書遺言作成にあたり、公証人に提出する戸籍等の取得を依頼された。
× 公証人が受遺者等の戸籍を間違いがないか確認したいということがあるが、他のもので確認できればよい

27 金融会社から、債権回収のために債務者の住民票の写しの取得を依頼された。
×
◯ 訴訟(簡裁)の依頼あれば可

28 金融会社から、債権回収のために相続が発生しているかの調査を依頼された。
×
◯ 訴訟(簡裁)の依頼あれば可

29 信託銀行から、顧客の遺言書作成のために、法定相続人の調査を依頼された。
× まだ相続が発生していない

30 弁護士から、遺産分割調停申立のための被相続人の相続関係調査を依頼された。
×
◯ 弁護士から調停申立書作成の依頼あれば可


№ 事 例(2号様式) 可否 備 考

31 成年後見人等である司法書士が、被後見人等の相続人の調査を行うこと。
◯ 2号様式

32 成年後見人から、被後見人の相続人調査を行うよう依頼された。 △ 後見人に被後見人の相続人調査する権利・義務あるのか?

33 遺言執行者である司法書士が、法定相続人の調査を行うこと。 ◯ 2号様式
調査行う権利・義務あることが条件

34 遺言執行者である司法書士が、遺言書検認の申立のために法定相続人の調査を行うこと。
◯ 2号様式
遺言書の検認申立=死亡

35 遺言執行者から、法定相続人の戸籍等の取得を依頼された。
☓ 2号様式
◯ 司法書士業務依頼であれば1号様式で可

36 遺言執行者から、受遺者の戸籍等の取得を依頼された。
× 2号様式


フランス成年後見制度視察座談会

                           平成14年7月
 
 
「対談 フランス成年後見制度視察を終えて
(日本の成年後見制度に対する提案)」



                     報告者 司法書士 永田廣次



(視察団・対談者)
      岡本 均 社会福祉士
      喜成 清重 司法書士
       酒井 範子 社会福祉士
      西原 勇 司法書士
      永田 廣次 司法書士




1 フランス成年後見制度の特徴


喜成 今年の春の連休、フランス成年後見視察団にご参加されまことにあり がとうございました。
そこで、本日は、視察団にご参加された方々に遠く金沢までご足労願い、フランス成年後見制度に対する感想、日本との比較、日本の制度の問題点、提案等につきまして議論していただきたく企画いたしました。
それでは、司会進行を永田さんにお願いいたします。


永田 はい。では、はじめたいと思います。
私は、視察は大変充実していたと思っているのですが、はじめに、参加された皆々様にお一人ずつフランス成年後見制度に対し特に印象的だったことにつきご発言をいただきたいと思います。
最初に西原さんいかがですか。


西原 私は、国家後見制度の存在が印象的でした。
これは、貧富に関係なく国民全体が後見サービスを受けられるという点でよい制度だと思いました。
それと、医師による本人の要保護性の通知義務ですね。これにより、保護の必要な人が必ず後見等のサービスを受ける機会が与えられるということです。


永田 はい。ありがとうございます。詳細、個別問題点については後で議論をいただくとします。
次に、岡本さんいかがですか。


岡本 私も、国家後見制度です。それと、裁判所の仮保護制度です。これにより、後見、保佐までの暫定的な対応がとれる。


永田 酒井さんいかがですか。


酒井 フランスの成年後見制度はいろいろなサービスが受けられる。又、ボランティア団体の多さというか後見の手助けをする層が厚いと思いました。


永田 はい。私もそう感じました。特にビックリしたのは公的施設の死亡管理も含めたサービスの広さですね。公的施設が葬式まで行うと言っておられました。


岡本 後見の手助けをするという点では、ボランティアの後見事務に事故が発生したときの対応、とくに賠償保険制度が取り上げられていました。もう少しこれを突っ込んでみたかった。


永田 喜成さんはいかがですか。


喜成 後見手続及び事務の簡便さ、費用の安さですね。裁判所費用は無料。ここで裁判所費用というのは裁判費用いわゆる弁護士費用とは異なります。後見制度の申立費用ですね。しかも、法律家の関与を要しない簡便さです。そして、後見裁判官の権限の広さです。


永田 はい。いろいろなフランス成年後見制度の特徴が出てきました。



2 フランス成年後見制度の背景


永田 では、かようなフランス成年後見制度はどのように維持発展されているんでしょうかね。西原さんいかがですか。


西原 それは、やはり、成年後見制度の長い歴史と高齢者の人口割合とか社会資源の問題でしょう。事前調査でも明らかなように日本に比べて単身で生活する高齢者の割合が高いんでしょう。


永田 ほかにどなたか。


岡本 社会背景でしょう。特に宗教の影響があるのではないでしょうか。後見施設も宗教的なものがあるとか言っていましたし。それと、人権の国ですね。



3 国家後見


永田 次に、フランス成年後見制度の特徴として、まず、国家後見を取り上げたいと思います。岡本さん、もう少し詳しく説明してください。又、日本に国家後見類似の制度があればその問題点等お話しください。


岡本 はい、フランスにおいて国家後見というのは、後見人に適任者を得られないときに後見判事が後見の事務を国家に付託した場合のことをいうようです。
フランスでは、後見の機関に完全な後見とか簡易な方式の後見とかありますが、誰も適任者がいないときは、国家が後見の事務を行うというものです。
日本においても今回の成年後見制度構築の際かような国家後見制度を検討されたようですが法案化されず、現在これが成年後見制度利用支援事業にスライドしたと私はみています。
日本の成年後見制度利用支援事業は、二つの側面があり、一つは成年後見制度の申立てに要する経費(登記手数料、鑑定費用等)を助成する点と、二つは後見人等の報酬の助成です。日本では、国が後見人の報酬を助成することで国家後見と類似のものとなっているように思われます。


西原 そうとしても、この成年後見制度利用支援事業は、行政に対する国の補助で、申立の対象者に家庭裁判所が報酬額について審判した場合、市町村が助成の判断をしたうえで助成額を振り込み国庫補助の対象としているにすぎない。
それすら、現在市町村で取り扱いはバラバラ。しかも、市町村と県が納得しないと事業が進まない。これでは、財産のない人に対する成年後見制度利用という観点から充分な制度でない。


喜成 何か刑法の国選弁護人制度と似ていますね。
国家後見と類似の制度があるが、現在使いにくい、機能していないというべきでしょうか。


永田 はいそうですか。
関連ですが、本日のリーガルサポート総会において、本部は家庭裁判所の要請に基づいて、神戸支部に相当数の後見監督人を事前にしかも低額で丸投げしたが、これも考え様によっては日本における国家後見の類似制度と見なされるかも知れませんね。



3 後見団体


永田 次の問題に移ります。受け皿という問題では後見団体の存在が特徴的でした。
日本では、後見人候補者の団体受け皿として、司法書士が社員となっているリーガルサポートがありますが足りないのではありませんか。岡本さん後見団体の説明とともに、日本における団体の受け皿という視点でお話ください。


岡本 はい。フランスにはもともとプロテスタントの慈善運動として後見団体が活動していた。これが現在、宗教的なもの非宗教的なもの相当数存在しているようで、国の承認を得てさらに国家後見人として活躍している。そういう意味では社会資源が豊富との印象をもちました。
日本はまだまだ後見人団体の社会資源が不足でしょう。いや、未成熟と言ってもよいかも知れません。今後は、弁護士会、社会福祉士会、家庭裁判所の調査官OBとかが後見団体設立にもっと活動する必要がでてくるでしょう。


西原 税理士会とか社会保険労務士会なんかは動きがあるんじゃないですか。私は、これらの会の要請でリーガルサポートの説明に行ったことがあります。


岡本 そうですか。税理士会が後見人団体を設立すると、受け皿としては頼もしいんではないでしょうか。税理士は現在約6万5000人おられ、税務関与先の事情、家族の状況を把握されている。私は、司法書士会と税理士会とで後見人協会を作られるとおもしろいと思っています。


永田 では、実際、後見団体はどのようにして活動しているのでしょう。西原さんお願いします。
 

西原 まず、成年後見人に誰が就任するかが前提となります。
フランスでは、社会福祉的観点から本人保護を考えているが、統計的には、家族による後見人就任が半数、残りは家族以外と言っていましたね。家族がいないときに裁判所の判断で、職業的後見人や、後見団体が登場するとのことだ。


酒井 その家族が後見人に就任できない場合の説明として、社会学的意味で家族が崩壊しているとか家族が遠方にいる。精神障害者の場合は、病状の特質のため家族が面倒を見切れない、家庭内で不和が生ずる等理由が述べられていました。80%の人は家族と交流がない。1/5の人は医者に会いたくないと統計的な話もありました。数字はともかく、このような状況は日本と同じと思いました。
しかし、フランスの場合は、精神病院のあり方の変化により精神障害者が、病院ではなく地域で生活するようになり、後見団体の受け皿、活動があると説明がありました。
しかも、財産を沢山持っている人は後見団体へこないと言っていました。


岡本 はい。後見団体は、国家後見の受け皿と理解すればいいのでないでしょうか。国家後見は、形式的に国家が後見人に任命されるが、実際の業務は後見団体が行うと説明がありました。
そして、後見団体の費用は国から支払われる。でも国の社会福祉関係の政策に基づくから、失業者対策に予算をとられ後見団体への予算は厳しくなっているとぼやいておられましたね。


永田 後見団体の後見業務は、後見団体の職員だけが行うのですか。


酒井 ボランティアの人も後見団体のお手伝いをするとの説明がありました。ボランティアの人々には、勤務引退の主婦、アシスタント達で、買い物の手伝い、近隣の助け合い、その他社会保障的お手伝いをしている。これらボランティアの人は後見団体の理事長と契約し援助行為をする。でもその範囲は任務が特定されていて包括的な権限は与えられないし、万一のために民事保険に加入していると言っていました。


永田 はい。ボランチィアのかたのお手伝いがあるので大分予算的にも助かるのですね。
ところで、日本のリーガルサポートは法人格がありますが、フランスの後見団体も法人格があるのでしょうか。


喜成 代理行為をするので法人格が必要だとの説明だった。
そして、裁判所のほうでは、後見人団体リストを用意している。理事長の経歴、職業まで把握しているようだ。団体長の変更があれば又適格性審査があるとも言っていた。地域裁判所の検察官が団体長の適正を判断している。なんだかんだと裁判所に後見団体として信用されるのに2年ぐらいかかるようだ。



4 医師の通知義務


永田 精神病院でも又裁判所でも聞いたのですが、成年後見制度に関する医師の通知義務という制度は初めて聞きました。この制度は概略どのようなものでしたかね。酒井さん。


酒井 フランスには、後見、保佐の開始までの暫定的な制度として、司法的保護という制度があります。そこでの医師の通知義務と理解しています。具体的には、公立病院の医師が、患者について法的保護の必要性を認めれば検察官にこれを宣言する義務です。又、義務かどうかははっきりしませんが、医師の裁判所に対する通知も裁判所との話のなかには出て来たようです。
これは、医師の成年後見制度申立てに関する「職権主義」ないしは「中間主義」みたいに思います。


岡本 日本においても結核とか伝染病には医師の通知義務がありますが、このフランスの通知義務は、医療制度から離れた福祉分野に医師が深く関与している印象でした。


永田 はいそうですね。フランスでは、成年後見制度に関わる医師の役割は大きい。しかも社会福祉士的な役割も担っているとの印象を私も強く思いました。


喜成 そうだ。被後見人の患者が医師に後見人がよくないと訴えるときは、そのことを裁判所に知らせるのも医師の役割だと言っていました。


西原 しかも、その通知義務ある医師は日常医ということで、眼科医でも産婦人科医でも対象となると言っていました。何かフランスにおける成年後見制度の底力というものを感じました。


永田 でも、いろんな医師が関わるということはわかりましたが、それら医師の報酬はどう処理されるんでしょうね。


喜成 鑑定は診療報酬に入っていると言っていましたから、通知の費用も診療報酬に入っているのかも知れませんね。もしかすると、無報酬かな?



5 司法的保護


永田 でも、医師の通知義務というのは、司法的保護すなわち仮保護の段階でしょう。これで、報酬がもらえるのでしょうかね。そもそも、仮保護というのがよくわからないのですが。


喜成 仮保護即ち司法的保護というのは、緊急の必要性における応急的意味合いもあるんじゃないですか。
本人の身上監護を早くしたい。又、財産管理を早くしたいというときに利用されるんじゃないですか。日本の制度で言えば審判前の保全処分ですかね。


永田 なるほど。では、日本の審判前の保全処分はうまく機能していますか。
喜成さんいかがですか。


喜成 ウーン。よくわかりませんが、本人の身上監護をしたいときに、審判前の保全処分がなされることは、未だ少ないでしょう。身上監護に対する保全処分そのものがなされるかも疑問です。


岡本 現在、身上監護について審判前に何かしようとすれば、事務管理の理論で行うしかないんじゃないでしょうか。日本の成年後見制度において後見人を選任してから後の手続きはできた。しかし、後見人選任前の本人保護手続きを検討する必要があるのではないか。


永田 はいそうですね。財産問題についても、例えば、不動産処分しようとしてもなかなか手続きが進まない。それゆえ、折角の売却機会を逃がすことも現実に生じています。もっとも、後見人選任手続きが迅速に進めば片付けられる問題かも知れませんが。


喜成 いや、フランスの司法保護制度は、それ自体独自の制度、本人の能力にしても、財産管理方法にしても、日本にはない、弾力的な応急的、暫定的制度でしょう。本人が単独で行為することができる点をみても日本にはない制度だ。


永田 そうですか。この審判前の制度が日本では、未だ構築されていないという理解でよろしいでしょうか。
それと、ちょっとわからないのが、さっきもチラッと話題に上りましたが、仮保護の場合手続き費用を誰が負担するのでしょうかね。


喜成 後見人選任とか保佐人選任の場合、日本では申立人負担となっている。審判前の保全処分はやはり申立人負担だろう。


永田 日本では、例えば司法書士という専門家が手続きに関与する場合、司法書士の報酬はいついただけるのでしょうかね。


喜成 書類を作成すればいただける。


永田 審判前に報酬をいただけるのでしょうか。


西原 フランスの後見裁判所では、手続費用は無料だといっていた。専門家の関与もないといっていた。とすると、司法保護でも手続きは無料だろう。


永田 ということは、医師の診療報酬のみが保護されていると考えればいいのでしょうか。


岡本 日本では手続き費用負担問題は今一度考慮する必要があるのでしょうね。日本において、申立人に費用負担ということを貫くと申立て案件が少なくなってしまうのでないでしょうか。先ほど議論された、成年後見制度利用支援事業も検討の余地ありでしょう。



6 後見人の権利義務


永田 大分議論があちこち飛びました。ここで後見人の権利義務について話したいと思います。


岡本 後見人の職務は、日本とほぼ同じように被後見人の身上配慮と財産管理ですが、その後見人それぞれに随分権限を任されている印象でした。


喜成 でも、後見人が本人に代わることはできない。医療行為も本人の自己決定に基づくのが原則だ。とは言っても、危険にある本人を助けないのは後見人の義務違反だ。フランスは民事と医療とを区別しているが、後見人は本人が入院をいやがっていても入院させている。そのいやがっている理由が何なのかが問題だ。例えば、精神病の症状でいやがっているか否かだ。
 そして、フランスでも医師は、後日民事責任を追及されるのはいやだから、後見人の治療同意をとるといっていた。しかし、後見人が治療行為の同意を与えるべきか否か限界事例での判断がむずかしいといっていました。勿論治療行為の内容によるでしょう。死にそうになっているときは治療行為の同意を与えなければならないし、足がいたいぐらいでは放置するんでしょう。最後は、人類愛でしょうね。日本でも同じような問題を抱えていますね。


永田 はい、難しい問題ですね。
その他、後見人はどのようなことをやっているのでしょうか。西原さんいかがですか。


西原 後見人の権限は弾力的でいろんなことをやっているようですね。例えば、株式投資も行うとか。それにより被後見人に利潤が生ずると、後見人の報酬が多大になるんだとか言っていましたね。後見人は株式投資がしたいみたいでした。でも、株式投資により、本人の財産を減少させてしまうこともあるようですね。


喜成 裁判所はよく後見人をリスト化していて、信用のおける後見人はコレコレと言っていました。後見人が株式投資に失敗して問題が生ずると上位のリストから外されてしまう。


西原 後見人候補者の裁判所への売り込みもすごいようですね。


永田 ちょっと後見人の権限が広いということで思い出したんですが、例えば、日本の後見人は、被後見人に代わって営業ができることとなっている。そこで、後見人が賃貸マンションを建築するとか分譲マンションを建築する。それら建築資金を金融機関から借り入れることもできる。フランスでは株式投資が実際行われているぐらいだから、これぐらいも実際上可能のようだが、日本では、かようなことは実務上できますか。


西原 後見人の善管注意義務との兼ね合いではないでしょうか。おそらく、できないでしょう。


永田 フランスにおいて後見人の実際の業務はどのようになっているんでしょうか。


酒井 後見人は、定期的に本人、関係者とコンタクトや連絡をとることが重要で、形式的なやりとりは手紙でも出来ると言っていました。


西原 私は、後見人が実際後見業務を行うにつきどのように権限証明するか興味があったのです。一つは、判決書の写しが権限証明書になる。判決書に理由も書いてあるから具体的権限が明確になる。もう一つは出生証明書の欄外に書いてあるのが権限証明書だとの説明がありました。
でも、権限証明書は日本の登記制度のほうが優れていますね。



7 葬式


永田 私が今回視察で一番驚いたのが、フランスでは、公的病院は病院で亡くなった人の葬式もする、しかもその予算化がされている。又、入院にあたっての身元保証人の制度などないという点でした。


岡本 民間のことはハッキリしていませんでしたがそうでしたね。日本での身元保証人徴収の件については、フランスでは損害保険でカバーしているから制度そのものがないとのことでした。
葬式については、民間では入院するとき本人の意向を聞いているのかもしれませんし、生前に埋葬契約が成立しているのだろうと言っていましたね。


酒井 遺体が目の前にあるのに放置できないでしょう。フランスでは制度ができているなと感じました。


喜成 日本において遺体を放置すれば、刑法の保護責任者遺棄罪に該当するでしょう。そんなことはできませんよ。


西原 埼玉では、被後見人が亡くなったが市へ死亡届を出す方法がなかった。死亡届出者は戸籍法で限定されていて、成年後見人は届出者ではないんです。しかたなく、被後見人と後見人が同居者として後見人が死亡届を提出し、火葬いたしました。制度の不備ですね。


酒井 だけど、病院になんでも任せるのも問題だと思います。例えば、医療過誤が原因で死亡した場合、変な診断書だって作成されないとは限らないのです。それが病院だけの手続きで、火葬まで進むとなると怖いものを感じます。


喜成 それは、病院の資質の問題でしょう。本来医師は、虚偽診断書を作成できないんじゃないですか。


酒井 しかし・・・。それから、病院に入院しているときは、本人の見舞いにもこないのに、本人が亡くなったら、本人の金目当てに動く人もいますね。


岡本 被後見人が死亡されたときの問題は日本ではまだまだ検討の余地があると思います。現実には、事務管理論や委任終了の際の応急処分の義務「急迫の事情あるとき」の「必要なる処分」で対応していますが、真正面から被後見人死亡の問題を検討する必要があると思います。


永田 議論も尽きないと思いますが、関東方面から来ておられる方もいらっしゃるのでこのあたりで対談を終わりたいと思います。最後に班長挨拶をお願いします。


喜成 皆さん本当にご苦労様でした。なかなかよい議論、提案が出ていたと思います。フランス成年後見制度視察が今後の日本の成年後見制度によい影響を与えることを念願してお開きとします。ありがとうございました。


(金沢市 喜成清重司法書士事務所にて)
       

国際交流部会活動経過報告

国際交流部会活動報告

                    報告者
                    司法書士 永田廣次   


第1 国際交流部会発足まで


1 平成17年4月9日(土)
倉敷市において平成17年度拡大幹事会が開催され、札幌での拡大幹事会と花巻第25回クレサラ被害者交流集会に韓国民主労働党の多重債務者対策の専門家を招待することに決定した。


2 平成17年7月8日(金)
札幌において、全国クレジット・サラ金問題対策協議会と韓国民主労働党代表等とが、今後の継続的経験交流の合意をする。


3 平成17年11月12日(土)
花巻第25回クレサラ被害者交流集会に韓国民主労働党の代表3人が参加した。


4 平成17年は、全国クレジット・サラ金問題対策協議会は、韓国民主労働党の代表を日本に2度招待し日韓協力して多重債務者救済協力の第一歩を印した。
そして、以下のような効果が期待された。
韓国での多重債務問題が、日本のサラ金資本の進出によってもたらされており由々しき国際問題である。クレサラ対協の行動とマスコミの世論形成により多重債務者被害防止効果が期待できる。
両国が多重債務問題の運動上の経験や被害者救済なぞの情報交換を密にすれば、両国の法規制・実務上の対策等、有力なパートナーシップを発揮し、運動も効果的に展開できる。自分の国のことは内側から見ているだけではわからないからである。
両国の国際連帯のもたらす勢いは将来「アジアの債務奴隷問題」としての人権救済や新しい運動を引き出せる。
そのためにも、「日韓多重債務救済シンポジュウム」を開くなどし、政治家やマスコミ、識者にも多重債務問題の深刻さと政治的取り組みの必要性を訴え、ホームレス問題・貧困問題・人身売買・自殺問題等論ずる必要性がある。


5 平成18年1月7日(土)
クレサラ対協新年総会で国際交流部会が発足した。



第2 国際交流部会の活動


1 平成18年4月13日(木)
消費経済新聞社の招きで、台湾から(財)中華民国消費者文教基金会方々が見えられ、大阪プロボノセンターにおいて、多重債務問題解決に関し日韓台の国際交流を行うことに合意ができた。


2 平成18年11月17日(金)
第1回多重債務対策国際会議が鹿児島市において開催された。この問題での国際会議は初めてであった。


3 平成19年5月31日(木)~6月2日(土)
(財)法律扶助基金会と中華民国消費者文教基金会が準備された、多重債務問題意見交換会が台北で開催された。この会議に国際交流部会のメンバー等が参加した。
台湾では消費者債務清理条例の立法化直前であった。この法律は日本の個人再生手続きと破産法に当たる法律である。台北立法院で2人の議員(立法委員)と多くのマスコミ取材陣の中で面談した。又、最高法院、鄭傑夫法官から「消費者債務清理条例」の内容についての解説を聞いた。
伊澤正之弁護士から日本における多重債務問題の現状と多重債務救済の諸 制度紹介を行った。
その後、台北市中山公園から総統府までの約2キロをデモ行進した。
その他、中華民国消費者文教基金や多くの律師と情報・意見交換した。
我々クレサラ対協の30年の闘いは台湾でも驚きの目で見られた。多重債務被害者の組織化や法律家の社会貢献が感銘を与えたようだ。
なお、消費者債務清理法は、6月8日成立した。


4 平成19年9月14日~15日
ブリュッセル(ベルギー)で開催された、ECRC会議(責任あるクレジットを求める欧州連盟)に参加し、和田聖仁弁護士が英語で日本の多重債務問題を報告した。


5 平成19年9月29日~30日
大津第27回被害者交流集会に台湾の消費者被害救済に取り組む「法扶助基金会台北北分科会」の代表が参加された。


6 平成19年10月4日(木)
弁護士会館において、台湾の「法律扶助基金会台北北分科会」と意見交換会を行った。又、太陽の会を案内し、実際の相談の仕方や相談体制について紹介した。


7 平成19年12月 日
台湾の債務整理条例施行後の問題点シンポに参加した。


8 平成20年11月13日~14日
ロンドンで開催された、ECRC会議に参加した。


9 平成20年11月8日(土)
秋田第28回被害者交流集会文化会において、「韓国・中華民国・日本の裁判官に聞く~多重債務者救済手続きの国際比較~」を開催した。


10 平成20年9月5日~9日
韓国における多重債務者救済状況について調査した。


11 平成21年10月31日~11月2日
台湾法律扶助基金主催「2009法律扶助国際シンポシンポジウム」に参加した。


12 平成21年11月27日
北九州市において韓国・台湾・日本の法律家交流フオーラムを開催した。


13 平成22年6月5日~6日
韓国の弁護士3名と事務局員が実務研・被連協研修会参加後木村達也弁護士と韓国クレサラ問題解決のための意見交換会を行った。


14 平成22年5月
和田聖仁弁護士が韓国漢陽大学ロースクールで「日本における任意整理の運用実態について」講演した。


15 平成22年5月
韓国の被害者7人が広島県呉市で開催された被害者交流会に参加され、多くのことを学んで帰られた。


16 平成22年 月 日
大山小夜先生がイギリスで開催されたCFRCに参加した。


17 平成22年5月7日~
皆川部会長が大連弁護士協会を訪問し、中国における金融問題を調査した。


18 平成22年8月28日~29日
韓国ソウル梨花女子大学で開催された韓国の被害者の会設立準備会に約30名(弁護士、司法書士、消費生活相談員、被害者の会、依存症対策会議)が参加した。


19 平成22年11月26日
被害者交流集会の前日第5回多重債務対策国際会議を開催した。参加国は、韓国15名・台湾6名、中国1名、日本であった。